【質問】 ツバメの巣にダニがいます。駆除できますか?
【回答】 ダニはツバメのヒナの血を吸います。どのツバメの巣にも多少のダニは住み着いているので(ダニはツバメの親から子へ、またその子孫へと移っていきます)、それほど気にする必要はありませんが、梅雨時の高温多湿でダニがかなり増えてしまうことがあります。それがどのくらいヒナに影響するの分かりませんが、ヒナの体や巣の表面をダニが這い回っているのが目に付くようだと、駆除したほうがよいかもしれません。
さらに、ダニはツバメがいなくなったあとも巣の中で冬越しして、翌年またツバメに取り付きます。古巣があると翌年にツバメがやって来やすいので、巣は壊さずに、ダニが潜んでいる巣材を捨てて、掃除をしておきましょう。
殺虫剤
ダニを殺すのに一番手軽なのは殺虫剤ですが、家庭用のスプレー殺虫剤の多くに含まれるピレスロイド系の薬剤に触れた野鳥のヒナの成長が阻害されたり、免疫力が阻害される例が報告されています。ヒナが死ぬほどではありませんが、なるべく使用は避けた方がよいでしょう。
なお、ピレスロイドは空気中で分解するので、ヒナがいる巣で使用するのは危険ですが、子育て後の巣にスプレーしてダニを殺すためには使用できます。翌年ツバメが来るまでに、殺虫剤成分は消えているはずです。
なお、ピレスロイドは空気中で分解するので、ヒナがいる巣で使用するのは危険ですが、子育て後の巣にスプレーしてダニを殺すためには使用できます。翌年ツバメが来るまでに、殺虫剤成分は消えているはずです。
巣の引っ越しをする
ヒナを巣から取り出し、底の浅い容器にヒナを移して、もとの巣のそばに取り付けてください。ヒナに付いたダニも一緒に引っ越してしまいますが、少数なので、だいじょうぶでしょう。引っ越しをさせると親ツバメは最初少し警戒しますが、しばらくするとヒナに餌を運びます。本物の巣のほうは、巣材を捨ててきれいにして、また翌年ツバメにつかってもらいましょう。
熱で駆除する
ツバメの巣のダニ退治について行われた研究があるので、ご紹介しましょう。ホームセンターなどで売っているヒートガンという道具を使って、巣を加熱してダニを殺すという方法です。ヒートガンは強力なドライヤーのような道具で、熱風を当ててプラスチック素材を曲げたりするために使います。ヒートガンを使ったダニの駆除は、次のような手順で行います。
ツバメの巣のダニ退治について行われた研究があるので、ご紹介しましょう。ホームセンターなどで売っているヒートガンという道具を使って、巣を加熱してダニを殺すという方法です。ヒートガンは強力なドライヤーのような道具で、熱風を当ててプラスチック素材を曲げたりするために使います。ヒートガンを使ったダニの駆除は、次のような手順で行います。
- 巣からヒナ取り出します。巣材はそのまま置いておいて構いません。
- ヒートガンの温度を260度にセットし、巣から15cm離して熱風を吹き付けます。この温度で羽毛やワラなどの巣材が燃えることはありません。ゆっくりヒートガンを動かしながら、巣の内側と外側を5分ほどかけて熱します。ダニだけでなく、巣内にいる寄生虫は全滅します。
- ヒナを巣に戻します。
ドライヤーはヒートガンの代わりにならないのかというと、ドライヤーは吹き出し温度が最高140度なのでヒートガンよりだいぶ"ぬるい"のですが、巣に近づけて時間をかけて加熱すれば、それなりにダニを殺せるかもしれません。
ネットで検索したところ、温度指定のできるヒートガンには次のような製品がありました。
ヒートガンを使う方法は下記の論文にありました。研究目的はツバメを助けたいということではなく、鳥の巣にいる寄生虫をいちど全部殺して、寄生虫のいない巣や、特定の種類の寄生虫だけがいる巣を作り、寄生虫が野鳥にどんな影響を与えるかを調べるというものなのですが。
Hund, A. K., Blair, J. T., & Hund, F. W. (2015). A review of available methods and description of a new method for eliminating ectoparasites from bird nests. Journal of Field Ornithology, 86(3), 191–204.