ひとつまえの記事に続いて、今度はヨーロッパとアフリカのツバメの渡りをジオロケーターで追跡した研究をご紹介しましょう。
この研究では、イタリア国内の3地点の繁殖地で2010年と2011年の7月にツバメにジオロケーターを装着しました。その結果、ツバメたちはアフリカのカメルーンを中心とする半径1000kmの一帯で越冬することが分かりました。さらに、この研究では103羽という多数のツバメの行動を分析することで、ツバメの渡りに関する多くの謎を解き明かしました。
この研究では、イタリア国内の3地点の繁殖地で2010年と2011年の7月にツバメにジオロケーターを装着しました。その結果、ツバメたちはアフリカのカメルーンを中心とする半径1000kmの一帯で越冬することが分かりました。さらに、この研究では103羽という多数のツバメの行動を分析することで、ツバメの渡りに関する多くの謎を解き明かしました。
追跡したツバメたちが地域間を移動する時期を分析したところ、次のようなことが分かりました。
繁殖が終わった後、メスの方が先にいなくなる。
メスはオスよりも平均3日早く繁殖地からいなくなりました。理由はわかりませんが、メスの方が巣立ち後のヒナの面倒をよく見るため、ヒナと一緒に他の場所へ移動したのかもしれないと研究者らは考えています。
繁殖地からの出発日は2年とも激しい雨が降った時期だった。
繁殖が終わってそろそろ旅立とうかなという時期に、何がツバメの背中を押すかというと、お天気のようです。雨が続くと餌の虫が捕れないので、出発を決意するようです。
繁殖地への到着時期は、越冬地の出発時期によって決まる。
3カ所の繁殖地は互いに約100km離れていて、最も北の繁殖地は山間部にあり気温が寒冷です。ここは他の2カ所よりも初卵日(ひとつめの卵を産んだ日)が遅いのですが、この初卵日の遅れは繁殖地への到着の遅さと一致していて、さらに到着の遅れはアフリカ越冬地からの出発が遅いことが原因でした。つまり、北の高地にあって虫の発生が遅く、そのため繁殖時期も遅くなる場所へ渡るツバメは、渡りの速度を遅くしているのではなく、越冬地を出発する日を遅らせているということになります。
春の渡りの出発日は体内時計で決まる。
越冬地での滞在期間と、そこから繁殖地へ出発する日は2年間ほぼ同じだったので、これらの時期は周囲の環境要因ではなく、ツバメの体内の要因で決まるようです。
雌雄で越冬地域に違いはなかった。
オスの方が早く繁殖地に行くためや、あるいは尾羽が飛行のじゃまになるといった理由から、オスはメスより繁殖地の近くで越冬するのではないかという説があったのですが、そうでもないようです。なお、ひとつ前の記事で紹介したアメリカ大陸の渡りでも雌雄の越冬地域に違いは見られませんでした。
越冬地では環境のよい場所を選んで定着する。
ツバメは必ず同じ繁殖地に戻ってくる習性があります。しかしアフリカの越冬地では、ツバメは1年目の冬の方が2年目の冬よりも北で越冬しました。この越冬地域は各年の気候の湿潤な地域(餌の虫が豊富なのでしょう)と一致していたので、ツバメは越冬地には強いこだわりがなく、年によって環境のよい場所を選ぶようです。
気候が温暖な年は、春の渡りの速度が速い。
越冬地を出発する日は2年とも同じころだったのに、2011年は2012年よりも早く繁殖地に到着しました。これは2011年に地中海西部が暖かかったためではないかと考えられます。
北で越冬しているツバメのほうが早く繁殖地に着く。
繁殖地に近い場所で越冬していれば、早く繁殖地に到着してよいなわばりを占有できるというのは、鳥の渡りについて昔から唱えられていた説です。それが今回、初めて証明されました。ただし前述のように環境条件も越冬場所を選ぶ理由になっているので、ツバメは両方のメリットを測りつつ越冬地を決めているようです。
この研究は、渡り鳥の1年のサイクル(繁殖→南へ渡る→越冬→北へ渡る)が遺伝子で決まっているのか、それとも環境によって決まるのかという大きな問題を一端を解明しています。ツバメの場合は、アフリカの越冬地を出発するタイミングは体内時計で決まり、それ以外(繁殖地への到着日やその結果である繁殖開始日など)のタイミングは気候や越冬場所という環境条件によって決まるらしいということが分かりました。
メスはオスよりも平均3日早く繁殖地からいなくなりました。理由はわかりませんが、メスの方が巣立ち後のヒナの面倒をよく見るため、ヒナと一緒に他の場所へ移動したのかもしれないと研究者らは考えています。
繁殖地からの出発日は2年とも激しい雨が降った時期だった。
繁殖が終わってそろそろ旅立とうかなという時期に、何がツバメの背中を押すかというと、お天気のようです。雨が続くと餌の虫が捕れないので、出発を決意するようです。
繁殖地への到着時期は、越冬地の出発時期によって決まる。
3カ所の繁殖地は互いに約100km離れていて、最も北の繁殖地は山間部にあり気温が寒冷です。ここは他の2カ所よりも初卵日(ひとつめの卵を産んだ日)が遅いのですが、この初卵日の遅れは繁殖地への到着の遅さと一致していて、さらに到着の遅れはアフリカ越冬地からの出発が遅いことが原因でした。つまり、北の高地にあって虫の発生が遅く、そのため繁殖時期も遅くなる場所へ渡るツバメは、渡りの速度を遅くしているのではなく、越冬地を出発する日を遅らせているということになります。
春の渡りの出発日は体内時計で決まる。
越冬地での滞在期間と、そこから繁殖地へ出発する日は2年間ほぼ同じだったので、これらの時期は周囲の環境要因ではなく、ツバメの体内の要因で決まるようです。
雌雄で越冬地域に違いはなかった。
オスの方が早く繁殖地に行くためや、あるいは尾羽が飛行のじゃまになるといった理由から、オスはメスより繁殖地の近くで越冬するのではないかという説があったのですが、そうでもないようです。なお、ひとつ前の記事で紹介したアメリカ大陸の渡りでも雌雄の越冬地域に違いは見られませんでした。
越冬地では環境のよい場所を選んで定着する。
ツバメは必ず同じ繁殖地に戻ってくる習性があります。しかしアフリカの越冬地では、ツバメは1年目の冬の方が2年目の冬よりも北で越冬しました。この越冬地域は各年の気候の湿潤な地域(餌の虫が豊富なのでしょう)と一致していたので、ツバメは越冬地には強いこだわりがなく、年によって環境のよい場所を選ぶようです。
気候が温暖な年は、春の渡りの速度が速い。
越冬地を出発する日は2年とも同じころだったのに、2011年は2012年よりも早く繁殖地に到着しました。これは2011年に地中海西部が暖かかったためではないかと考えられます。
北で越冬しているツバメのほうが早く繁殖地に着く。
繁殖地に近い場所で越冬していれば、早く繁殖地に到着してよいなわばりを占有できるというのは、鳥の渡りについて昔から唱えられていた説です。それが今回、初めて証明されました。ただし前述のように環境条件も越冬場所を選ぶ理由になっているので、ツバメは両方のメリットを測りつつ越冬地を決めているようです。
この研究は、渡り鳥の1年のサイクル(繁殖→南へ渡る→越冬→北へ渡る)が遺伝子で決まっているのか、それとも環境によって決まるのかという大きな問題を一端を解明しています。ツバメの場合は、アフリカの越冬地を出発するタイミングは体内時計で決まり、それ以外(繁殖地への到着日やその結果である繁殖開始日など)のタイミングは気候や越冬場所という環境条件によって決まるらしいということが分かりました。
この結果から、バードリサーチの季節前線ウォッチで、ツバメの初認時期が年によって大きく変わっていることの理由が分かってきます。一方で、もし渡りのタイミングが遺伝的に決まっている鳥がいたとしたら、地球温暖化が進んで餌になる昆虫の発生時期が変わってくる場合には対応が難しくなるでしょう。
紹介した論文
Liechti, F., Scandolara, C., Rubolini, D., Ambrosini, R., Korner-Nievergelt, F., Hahn, S., … Saino, N. (2015). Timing of migration and residence areas during the non-breeding period of barn swallows Hirundo rustica in relation to sex and population. Journal of Avian Biology, 46(3), 254–265. http://doi.org/10.1111/jav.00485