2016年07月02日

アメリカ大陸の東部と西部で繁殖するツバメは越冬地が異なっている

電波発信機を付けられないような小さなサイズの野鳥の渡りを追跡するジオロケーターという装置があります。北米の5地点で、繁殖しているツバメにジオロケーターを装着して越冬地までの渡りを追跡した研究論文が出たので、ご紹介しましょう。

ジオロケーターは超小型の照度計で、日の出・日の入り時刻を記録することで緯度経度を算出します。データは内蔵メモリに蓄積されるので、ツバメが移動したコースを知るためには、ジオロケーターを付けたツバメを翌年再捕獲してデータを読み取る必要があります。ジオロケーターを使った調査はツバメの夫婦が越冬地でも一緒だったそうですでも紹介しているので参考にしてください。ツバメに装着するジオロケーターは0.7gくらいのものです。

それでは、北米のアメリカ合衆国とカナダの繁殖地から南米の越冬地までツバメの渡りを追跡した結果をご説明しましょう。下の地図の★がジオロケーターを装着した地点で、黒線が秋の渡り、赤線が春の渡りです。ツバメの正確な位置情報が得られなかった期間は、その前後の位置を破線でつないであります。

初めに、地図Eをご覧下さい。北米と南米で同じ色のポイントが対応する繁殖地と越冬地です。ツバメは南米のいろんな場所で越冬しましたが、同じ繁殖地のツバメが越冬したエリアの中心に■が記されています。これを見ると、北米東部で繁殖するツバメは南米ではブラジル周辺で越冬し、北米西部で繁殖するツバメは中米で越冬するというように、越冬地が異なっていることが分かりました。

ツバメ米大陸修正.png

続いて、上記の地図の渡りコースに注目してみましょう。北米東部のツバメは秋の渡りはカリブ海の諸島を通って南米に渡り、春の渡りではメキシコ半島を通って北米に戻っています。秋の渡りのように海を越えていく方が距離は近いのですが、春に遠回りするのは風向きのためなのかもしれませんね。

一方、北米西部で繁殖するツバメはあまり南まで移動しないため、東部のツバメのような往復で楕円を描くようなルートでは渡っていないようです。

繁殖地と越冬地の直線距離の平均は1,788kmで、これは大坂−台北の直線距離と同じくらいです。しかし実際には蛇行して飛んでいくので移動距離はかなり長くなります。いちばん長距離を渡ったツバメは13,619kmも飛んでいて、これは日本から南へ向かうとしたら南極点まで行ける距離です。

北米のツバメは、アメリカ合衆国中央部の南北と五大湖南部では個体数が増加か安定していますが、それ以外の合衆国とカナダでは減少傾向にあるそうです。この研究が対象にした5カ所の繁殖地は、すべて減少傾向にある地域なのですが、地域による増減傾向の違いは、越冬地の違いや、越冬地までの渡り距離の違いによって生じている可能性があると、今回の追跡調査をした研究者たちは考えています。

追記:2016/07/17 図の地図@が間違っていたのを修正しました。

紹介した論文
Hobson KA, Kardynal KJ, Van Wilgenburg SL, Albrecht G, Salvadori A, Cadman MD, et al. (2015) A Continent-Wide Migratory Divide in North American Breeding Barn Swallows (Hirundo rustica). PLoS ONE 10(6): e0129340. doi:10.1371/journal. pone.0129340
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0129340
posted by ツバメネット管理人 at 17:13| Comment(2) | ツバメ研究紹介
この記事へのコメント
こんにちは。
図の(1)と(5)が同じみたいです。
Posted by if at 2016年07月04日 12:00
Ifさん、おひさしぶりです。
たしかに・・・、@のワシントン州が間違っていますね。
論文に著者のメールアドレスが書いてあるので連絡しておきます。
Posted by 神山和夫 at 2016年07月04日 12:32
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