2016年04月23日

12. ツバメの息子は居残り、娘はよそへ行く

この記事は2015年4〜8月に発行した週刊つばめニュースを修正したものです。

どうしてそこで巣を作れると知ってるの?
分かりにくい場所にある古巣に、どうして毎年ツバメがやって来るのかと不思議に思うことがあります。ツバメは少し奥まった場所が好みで、天敵のカラスなどに見つからないように、外側からは見えにくいところに巣を作ります。でもツバメの寿命は短いので、1年〜数年で代替わりが起きているはずですから、見つけにくい場所にある巣に毎年やって来るのは不思議な気がします。

大阪府のTさんのご近所には、玄関の中にツバメの巣があるお宅があって、もう10年くらい毎年ヒナを育てているそうです。毎年泥を上塗りして使うので、ずいぶん大きな巣になっています。

20150703_10year_nest.jpg

横浜地下鉄舞岡駅では、地下の深いところに巣が作られています。この動画の後半に、ツバメが長い地下通路を飛んでいくようすが写っています。



ツバメは古巣のある場所に好んで巣を作りたがりますが、どうして屋内や地下に古巣がある、あるいは古巣があった(地下鉄の巣は繁殖後に撤去されると思いますので)と知っているのでしょうか?

巣立った幼鳥は巣場所の下見をしている?
証明されていることではありませんが、巣立ったヒナは東南アジアに渡る前、一番子なら約二ヶ月を生まれた場所の近くで過ごすことができますから、その時期に巣作りできる場所を下見している可能性があります。

翌年、1歳になって日本に帰ってきたツバメの全員が、生まれた地域からずっと離れた場所へ移動するとしたら、前年に近くの巣場所を学習しても意味がありません。しかし、生まれた場所の近くに戻ってくる1歳ツバメも少なくないようです。

ヨーロッパで1歳ツバメを調べた調査によると、スペインではオスの32%とメスの7.4%、デンマークではオスの5.5%とメスの1.3%が、前年に同じ 地域で生まれたツバメだったそうです。(2歳以上のツバメは必ず同じ場所に戻ってくるので、調査地のツバメ全部に足環を付けて、足輪のないツバメが来たら1歳ツバメと考えます。)

両国でずいぶん割合が違いますが、同じ地域に居残る率はその地域の住みやすさによるようです。デンマークよりもスペインの方が、居残りオスは遠くへ移動したオスよりも長生きしているので、よい場所に居続けることが得だからスペインの居残り率が高かったと考えられています。

ただし長生きするのはオスだけで、反対にメスの居残り組は、よそへ行ったメスよりも寿命が短くなっていました。そのようなわけで、ツバメの息子には居残りが多く、娘はよそへ行くものが多くなっているようです。

野生動物の子どもは生まれた地域から離れた場所で繁殖するのが普通で、哺乳類ではオスが、鳥類ではメスが、生地から離れるのが一般的です。ツバメも鳥類一般の例に洩れず、娘が遠くへ旅立つのです。

子育てしている巣のまわりに、よそで巣立ったらしいツバメの幼鳥が集まってくるのを見かけるという話を、ときどき聞くことがあります。これはもしかしたら、来年自分が巣を作るときの場所を下見に来ているのかもしれません。
posted by ツバメネット管理人 at 22:24| Comment(0) | つばめニュース
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