2016年04月11日

9. ツバメの天敵(後編)

この記事は2015年4〜8月に発行した週刊つばめニュースを修正したものです。

前回はツバメの三大天敵であるカラス、アオダイショウ、スズメのことをを書きました。今回は読者の皆さんにいただいたメールから、その他の天敵についてご紹介します。
■ハヤブサ
 私自身も見たことがあるのですが、ヨシ原のねぐらに集まるツバメを鉄塔の上から狙っていました。ハヤブサは鳥を専門に襲うタカですが、体が大きいので巣を狙ってくることはないと思います。たくさんのツバメが集まるねぐらは狩をしやすい場所のようにも思えますが、ツバメが姿を見せるのは日没前後の短い時間なので、何羽も獲ることは難しいでしょう。ハヤブサは飛んでいる鳥しか狙わないので、ヨシ原に入ったツバメは安全です。

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(ハヤブサ 内田博)

■チョウゲンボウ
 ハヤブサの仲間ですが小型で、普段は地上にいるネズミや昆虫を主食にしていますが、神奈川県秦野市の宮本さんから、ツバメの巣にいるヒナを襲った目撃談を教えていただきました。チョウゲンボウが民家の軒先にあったツバメの巣へ飛翔し、なんと、その巣にとまってから足でヒナをつかんで飛び去ったそうです。
 このチョウゲンボウがとまった巣は、まったく壊れていませんでした。チョウゲンボウの体重は150〜200gなので、しっかり壁に付いている巣は壊れないのかもしれません。

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(ツバメの巣を襲うチョウゲンボウ 宮本桂)

■ハイタカ
 神奈川県小田原市のNさんのお宅の巣では、巣にいたヒナがハイタカにさらわれました。ハイタカはツバメの巣があるガレージに入って、すぐまた飛び出してきましたが、3羽のヒナが連れ去られたそうです。ここでも巣は壊れておらず、1羽だけヒナが残っていて、その翌日に巣立ったということです。
 ハイタカは飛んでいる小鳥を襲うタカですが、巣にいるヒナを襲うのはめずらしいと思います。

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(ハイタカ 内田博)

小鳥を襲う種類のタカがいる場所は、ツバメだけでなく他の小鳥も豊富で、自然環境に恵まれた場所だと思います。ツバメにとっても都会よりエサが多くて住みやすいはずなのですが、タカがツバメの居場所や捕まえ方を覚えてしまうと、頻繁に襲われることがあるかもしれません。

■フクロウ
 茨城県東海村のAさんのお宅の巣は、フクロウに襲われてしまいました。その夜、6羽のヒナがいる巣には親ツバメが座っていました。深夜二時ごろにAさんが窓から巣の様子をのぞいたところ、巣がある場所に何かがいることに気がついて、即座にドアを開けて外へ出ました。驚いたフクロウは逃げようとしてカラス避けの網に絡まりましたが、網を切って逃がしてあげたそうです。一方、親ツバメはしばらく地面にうずくまっていたあと、どこかへ飛んでいってしまいました。残念ながら怪我をして死んでしまったヒナもいて、生き残ったヒナは鳥獣センターに保護してもらったということです。
 また別の例ですが、千葉県我孫子市で、フクロウの巣箱に付けたカメラに、フクロウが何回もツバメを巣箱に持ち帰ってくる写真が写っていたことがあります。夜、小鳥は茂みの中で眠るのでフクロウには捕まえられませんが、ツバメは遮蔽物のない軒下で眠っているので、夜中に軒下を探してまわればツバメが見つかるということを学習したフクロウがいるのかもしれません。

■イソヒヨドリ
 昨年11月のバードリサーチ集会で、大阪でツバメの調査をしている福岡賢造さんが紹介してくださった事例です。イソヒヨドリがさえずっている場所の近くのツバメの巣から、ヒナが全部消えてしまうという事件が頻発していて、イソヒヨドリがヒナを連れ去っている可能性が高いようです。

isohiyo.jpg
(イソヒヨドリ 植田睦之)

■モズ
 モズは昆虫やカエルなどを主食にしていますが、小鳥を襲うこともあります。チョウゲンボウの目撃談を教えて下さった宮本さんの自宅のツバメの巣から、モズがヒナをさらっていったことがあるそうです。私も、ツバメではありませんが、モズがスズメの成鳥を捕らえるのを見たことがあります。

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(モズと獲物のスズメ 神山和夫)

■カッコウ
 カッコウは自分ではヒナを育てずに、他の鳥の巣に卵を産み、孵化したヒナは巣内の卵を捨てて、育て親が運んでくるエサを独占して育ちます。日本のカッコウはツバメの巣に産卵することはありませんが、イタリアで、カッコウがツバメの巣に産卵した例が数件あったことが記録されています。
 こちらのページの一番下に、ツバメの巣にいるカッコウのヒナの写真があります。イタリア語のようだし、たぶんイタリア国内の写真だろうと思います。
http://freeforumzone.leonardo.it/lofi/IL-CUCULO/D7651878.html

ツバメを襲うとはいえ、これらの天敵はツバメと同様に、私たちが共存を考えていかないといけない生きものたちです。自然界にはツバメの天敵がいますが、ツバメの最大の敵は、巣を落としたり、作らせなかったり、エサの虫がいる場所をなくしてしまったりする人間です。そしてツバメを守ってあげられるのも、人間だけなのです。

posted by ツバメネット管理人 at 11:36| Comment(1) | つばめニュース
この記事へのコメント
今年、もうすぐ巣立ちそうなツバメの雛が襲われました。
朝の5時30分過ぎに巣はもぬけのからで
巣の下には猛禽類の羽が落ちていました。
調べてみたら雀鷹(ツミ)かもしれません。
巣も壊された形跡もありません。
悔しくて調べていたらこのブログに辿り着きました。
カラスよけなどしていたら被害は無かったのかと今更ながら考えています。
猛禽類には無意味なのでしょうか?
ツバメが当たり前のように巣立ちできると思っていた。
残念でなりません。
Posted by 中川 at 2021年06月19日 00:24
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